家庭菜園記事

「家庭菜園のサイエンス」~肥料ってなに?-③特殊肥料編~

みなさんこんにちは!のはら菜園のかーくんです。
のはら菜園日記では、 会社員をしながら、週末に栽培中無農薬&少量多品種栽培に挑戦している、弊菜園の情報や、オススメ野菜・食べ方、農に関連した知識などを中心として紹介しています 。 (本記事はPRを含んでいます)

さて今回は、家庭菜園を科学的な視点で深堀してみる「家庭菜園のサイエンス」第3回目になります。

第1回目第2回目に引き続き、肥料について深堀していきたいと思います。

第1回目は、肥料ってそもそも何なのか?何が入っているのか?など、基礎的な内容を説明しました。第2回目は、肥料の分類と普通肥料に分類される肥料について説明しました。

第3回目は肥料分類の際に少しだけ登場した、「特殊肥料」について深堀したいと思います。

今回の記事を読んでいただくと

  • 特殊肥料がどんな物なのかが分かる。
  • 特殊肥料の特徴が分かる。

このようなことが分かるようになりますから、最後まで読んでもらえると嬉しいです。

今回の記事も「図解でよくわかる土・肥料のきほん 日本土壌協会監修」を参考図書として、私の考えも追記して書いています。

それでは本題に入ります。

特殊肥料ってなに?

まず、特殊肥料ってそもそも何?なにが特殊なの??と思われている方が大半だと思いますので、肥料の分類から確認したいと思います。

肥料区分
肥料の分類

細かく区分するとさまざまな分け方がありますが、今回は上の図のように分類しています。

特殊肥料とは、有機質肥料の中の一つで、牛糞たい肥や発酵鶏糞などが含まれている肥料群になります!

ここで、特殊ってことは、、、もしかして普通肥料もあるの?って思われたかた!正解です!!

特殊肥料以外の肥料が普通肥料と呼ばれています。特殊、普通の分類は「肥料取締法」という法律で決められています。

では、法律で特殊肥料がどのように書かれているかというと次のように書かれています。

(5) 特殊肥料
特殊肥料とは、魚かすや米ぬかのような、農家の経験と五感により品質の識別できる単純な肥料や、堆肥のよ
うな、その価値や施用量が必ずしも主成分の含有量のみに依存しない肥料で、農林水産大臣が指定したものを
いう。平成24年現在、46種類が指定されている。

肥料取締法より引用

法律の文面を読むだけでは、ん??ってなるような書き方がされていますが、品質が多様(成分が違う事がある)で有効成分量の多少のみでは一律に評価が難しい物。たい肥のように栄養素としての効果だけでなく、土壌改良剤としての効果もある物。というような理解でよいと思います。

それでは、現在登録されている特殊肥料一覧を載せておきます。

特殊肥料一覧

聞いたことのある物から、初耳な物まで沢山の特殊肥料が登録されていますね。

特殊肥料にはどんなものがあるの?

特殊肥料の代表選手たち

続いて、特殊肥料にどんな栄養素が入っているのかを確認していきたいと思います。

前提として特殊肥料は、成分が一定でないという特徴を持っていますので、ここは押さえておいてください。

特殊肥料は、有機物肥料なので、基本的には複数の栄養素を含んでいます。まずは、窒素、リン酸、カリウムの3大栄養素を多く含む特殊肥料を紹介したいと思います。次のようにまとめてみました。

表を見ていただくと、2~3種類の栄養素が含まれていることが分かると思います。

一つの肥料で複数の栄養素を供給できるのはメリットですが、しかし含まれる栄養素を理解していないと、肥料をやりすぎてしまい、かえって野菜の育ちが悪い、病気に罹ってしまった、なんてことになりかねないので注意が必要です!

特殊肥料の人気者!?家畜糞類

続いて、皆さんが有機質の肥料と聞いて一番に思い浮かべる物は、動物のフンではないでしょうか?

動物のフンは家畜糞類として特殊肥料に分類されています。

家畜糞類は、そのものを乾燥させただけのものや、他の材料と混ぜた後に発酵させて、たい肥化させた物があります。両方販売されているのを見ますが、発酵させて、たい肥化した物の方が多く並んでいるように思います。

家畜糞類として代表的な、牛糞、豚糞、鶏糞それぞれの特徴をご紹介します。

牛糞はホームセンターなどで堆肥として売られているのをよく見かけるんじゃないでしょうか?牛糞は肥効は緩やかですが、おがくずやバークなどと配合されているため、土壌改良能力が高いのが特徴になっています。

それに対して、鶏糞は、ホームセンターで発酵鶏糞として売られていいます。肥効は速効性があり、分解速度も速いです。しかし、おがくずなどは含まれていないことが多いため、土壌改良能力は低い~無しです。分解が速いことで、追肥にも有効な有機質肥料です。

豚糞は牛糞と鶏糞の間に位置するような性質を持っています。そこそこの肥効を持っていて、そこそこの土壌改良能力を持っているイメージです。

これらは、どの堆肥が良いという訳でなく、使い方が大事になってきます。もし、追肥に牛糞を使えば、分解速度が遅く肥効が得られませんし、土を柔らかくしたい(土壌改良したい)と思ったときに鶏糞を混ぜても効果は望めないでしょう。

あなたがどんな効果を期待しているのかによって使い分けを検討してみて下さい。

でもさ~特殊肥料って何がどれくらい入っているかわからないし、判断が難しいんじゃないの?」って方もおられると思います。

特殊肥料は品質の評価が難しい為、成分表示をしなくても良いルールになっています。その通りです。

しかし、家畜糞類においては成分表示が義務付けられていて、何がどれくらい入っているのかが分かるんです!

これは、品質のばらつきが大きいことが問題となり、2005年に家畜糞類・堆肥については、肥料の種類だけでなく、品質表示が義務付けられました。

これによって、原料が分かるようになったので、求めている効果を発揮してくれる肥料を手に入れやすくなったんです。しかし、あくまでも「めやす」として数字であり、過信するのは避けた方がよいと思います。

有機質肥料を使う時の注意ポイント「C/N比」ってなに?

C/N比の基礎

ここからサイエンスっぽいお話を一つ入れてみたいと思います笑

有機質肥料を使用する際に注目したい指標として「C/N比」というものがあります。これは、肥料に含まれている炭素成分(Carbon)と窒素成分(Nitrogen)の比を表しています。

なぜこのC/N比が重要な指標となっているかというと、有機質肥料と一言で言っても、この数値が違うと効果も大きく変わってくるからです。

C/N比の値の意味は、値が小さくなると窒素成分の量が多くなり値が大きくなると窒素成分が少なくなります

C/N比の基準値は20~30と言われていて、それよりも高いか、低いかを判断します。

C/N比が低い堆肥を使用した場合、窒素含有量が多くなるため、分解速度は速く、肥効は素早く高くなります。しかし、土壌改良効果はあまり期待できません。

それに対して、C/N比が大きい場合は、窒素含有量が少なく、分解速度が遅い為、肥効は緩やかで低くなります。しかし、土壌中の微生物の活動が促進されるため、土壌改良効果が高くなる傾向にあります。

また、肥料の臭いでもC/N比の違いを感じることが出来ます。

C/N比の大きな堆肥の場合、落ち葉やおがくずなどを多く含んでいるため、強い臭いは発しませんが、C/N比の小さい堆肥の場合、豚糞や鶏糞を多く含んでいるため、アンモニアガスが発生し悪臭を放ちやすくなります。

熟練の農家になれば臭いでも、C/N比をざっくりと掴むことが可能だとか。。。

施肥時のC/N比の目安

C/N比で肥料としての効果が変わってくるという事が分かってもらえたと思いますが、ではどれぐらいとかの目安があるの?と思われると思います。

ざっくりですが、以下のような目安になります。

なるべく早く肥料の効果を出したい場合
 ⇒C/N比10以下 使い方例:追肥

土壌改良も兼ねて、ゆっくりと土づくりをしたい場合
 ⇒C/N比20~30以上 使い方例:土壌改良、元肥

続いて、C/N比の低い物、高い物の例をご紹介します。

C/N比の低い物の例
 ・鶏糞 C/N比:6~8程度
 ・野菜残渣
 分解速度が速く1年間で60~80%が分解されると言われています。

C/N比が中程度の物の例
 ・豚糞、牛糞、馬糞 C/N比:10~20程度
 分解速度は中程度で、1年間に40~60%程度が分解されると言われています。

C/N比が高い物の例
 ・稲わら、おがくず、バーク C/N比:50~100
 分解速度が遅く、1年間で分解されるのは40%以下

このような原料を配合して堆肥化させることで、さまざまなC/N比を持った堆肥が作られています。

C/N比の大きな堆肥を入れた場合の注意点ですが、未完熟な堆肥であった場合、分解速度が非常に遅いため、肥料効果が表れてくるのが1~2年先といった状態になります。

そのような場合、窒素欠乏状態となり、植物が育たない土壌になってしまうので注意が必要です。

また、C/N比が非常に小さい鶏糞などを大量に投入した場合は、非常速く分解され、肥料効果がすぐに発現しますので、窒素過剰となり病気の原因となる為注意が必要です。

まとめ

さて今回は、有機質肥料に分類される「特殊肥料」の基礎と有機質肥料を使う際に気を付けたい「C/N比」についてお話しました。

特殊肥料とは、含まれる成分が一定でなく、原料や製造条件で品質の振れが大きいものの、価格が比較的安価であることや、堆肥などは土壌改良効果(土をフカフカにしてくれる)も期待でき非常に有用な肥料です。

また、特殊肥料などの有機質肥料を使用する際に注意したい数値としてC/N比があります。20~30を基準として、それより大きい場合は肥料効果は緩やかになるものの、土壌改良効果が期待でき、C/N比が小さいものは、素早い肥料効果が期待できるものの土壌改良効果は望めないという特徴を表しています。

特殊肥料という言葉のせいで、障壁を感じてしまいますが、言葉は法律上の区分の為だけで、実際は天然物を利用した肥料となっています。

今日の記事を読んでいただいて、早速家庭菜園仲間にこう言ってみましょう!「特殊肥料使ってる?あ、その堆肥のC/N比ってどんな感じ?」なんて聞いた時には、こいつ、、、ただ者ではない!!ってなりますよ!!(冷たい目で見られた場合はごめんなさい

まあ、冗談はさておき、肥料は目的や状況に合わせて使う事が出来れば鬼に金棒ですが、以外に皆さん家庭菜園などでとりあえず肥料撒いてるって感じではないでしょうか?

もし今回の記事が少しでもお役にたてると嬉しいです。

また今回の記事は参考図書として、「図解でよくわかる土・肥料のきほん」をもとにしています。

もし興味のある方はリンクを貼っておくので見てみてください。

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それでは最後までありがとうございました。

続きの記事はこちら⇒【「家庭菜園のサイエンス」~肥料ってなに?-④微量必須要素編~

のはら菜園 かーくん

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